
こんにちは。丹羽智彦です。三重県四日市市で、丹頂ガスのグループ会社「株式会社丹頂不動産」の営業を務めています。とくに、市街化調整区域や空き家、相続したまま使い道のない土地のご相談を多くいただいています。
私は四日市市垂坂町で生まれ育ちました。大学卒業後は名古屋の家電量販店やかに料理専門店を経営する企業に就職し、その後イオングループへ進みました。店舗勤務やイオン銀行、本部商品機能会社(千葉・海浜幕張)などで約10年間勤務し、全国規模の企業で経験を積みました。
転機となったのは、父の認知症でした。長男で一人っ子という立場もあり、母ひとりに任せるのではなく、地元に戻る決断をしました。四日市に戻ってからは、宅地建物取引士の資格を活かし、住友不動産販売で7年間、不動産仲介に携わりました。
2023年、会社方針による地方店舗の一斉撤退を機に、丹頂ガスのグループ会社として丹頂不動産を立ち上げました。
目次
「どうにもならない」と言われた土地に向き合っています

市街化調整区域は、家を建てたり売ったりが、通常の土地より手続きが増えやすくなる地域です。建築には行政の許可が必要になることが多く、農地の場合は転用の手続きも関わります。
許可申請や関係者との調整が必要になるため、取引までに半年〜1年以上かかることもあります。手続きが複雑で、単価も比較的低く、時間もかかる。こうした理由から、多くの不動産会社では「エリア対象外」として扱われないことも少なくありません。
実際、私のもとに来られるお客様の多くは、すでにどこかで断られています。
「うちの土地はもうどうにもならんと言われた」
「市街化調整区域だから無理だと言われた」
「タダでもいいからもらってほしい」
そうした言葉を、何度も聞いてきました。
しかし私は、調べもせずに「できません」とは言いません。まずは、その土地が都市計画法上どういう位置づけなのか。既存集落に該当するのか。建築の見込みはあるのか。農地であれば、農地転用の可能性はあるのか。一つひとつ確認します。
もちろん、結果として本当に建築ができない土地もあります。第一種農地など条件によっては、農業従事者以外への売却が難しいケースがあります。その場合も、理由を確認したうえでお伝えします。
それでもなお、市街化調整区域の案件が私の取扱件数の約7割を占める状況です。向き合い続けてきた結果、自然とそうなっていきました。
市街化調整区域は「制限された土地」と言われます。しかし私は、「諦められた土地」であることのほうが問題だと感じています。
土地そのものよりも、「もう無理だ」という思い込みのほうが、可能性を閉ざしていることが少なくないからです。
私は不動産屋というよりも、地域の相談役でありたいと考えています。土地を売ることが目的ではなく、困っている状態を整理し、できることとできないことを明確にすることが仕事だと思っています。
市街化調整区域だからといって、最初から結論を出す必要はありません。まずは事実を調べることから始めます。それが、いま私が取り組んでいる仕事です。
なぜ、市街化調整区域に向き合うのか

私はもともと、市街化調整区域を専門にやろうと思って独立したわけではありません。
住友不動産販売で7年間、不動産仲介をしていました。市街化区域の住宅地やマンションなど、流通性の高い物件が中心です。町名を聞けば、おおよその価値は判断できます。正直に言えば、当時の私は無意識に「良い土地」「難しい土地」を仕分けしていました。
2023年、四日市営業所の閉鎖が決まりました。名古屋へ行く選択もありましたが、私は地元に残る道を選びました。丹頂ガスのグループ会社として不動産事業を立ち上げ、改めて四日市の土地と向き合うことになります。
その中で、これまで深く扱ってこなかった市街化調整区域の案件に出会いました。手続きが複雑で、時間がかかり、単価も低い。営業効率という意味では決して良い分野ではありません。実際、相談の多くは簡単にまとまる案件ではありません。
しかし、一つひとつ調べ、現地に足を運び、所有者の話を聞いていくうちに、私の考えは変わりました。
一見「難しい」と思っていた土地にも、条件がそろえば活用の道がある。逆に「良い」と思っていた土地でも、持ち続けることで負債になっているケースもある。町名やエリアだけで価値を決めることはできない。そう実感するようになりました。
だから私は、いまは「土地に貴賤なし」と思っています。
市街化区域だから良い、市街化調整区域だから悪い、という単純な話ではありません。大切なのは、その土地がいまどのような法的条件にあり、所有者がどんな状況に置かれているかです。
私の仕事は、不動産を売ることではありません。困っている方の状況を整理し、解決の道筋をつくることです。
市街化調整区域の土地や空き家を抱え、どうしていいか分からなくなっている方。売りたいけれど売れない。管理できないけれど放っておけない。誰に相談すればいいか分からない。その状態を解きほぐすことが、私の役割だと考えています。
不動産業界ではよく、「不動産は資産です」と言われます。しかし、持っているだけで1円も生まない土地は、本当に資産と言えるでしょうか。固定資産税を払い続け、草の管理だけが残る状態であれば、それは資産というより負担に近いこともあります。
だからこそ、調べもせずに「できません」とは言いませんし、言えません。できることは何か。できないことは何か。時間がかかるのか。許可が必要なのか。そこを明確にします。結果として「活用は難しい」という結論になることは、多くあります。それでも、根拠を示してお伝えすることで、次の判断ができ、前に進めるようになるのです。あいまいな答えを出し、不要な期待を持たせることはしません。
効率だけを考えれば、市街化調整区域はやらない選択もあると思いますし、業界でも異例だと思います。それでも向き合い続けてきた結果、取扱件数の約7割がこの分野になりました。
それは戦略というよりも、変化した価値観の結果です。
私は、不動産屋というよりも、地域の相談役でありたいと思っています。それが、市街化調整区域に向き合っている理由です。
耕作放棄地に多くの「暮らし」が生まれた事例

あるご相談は、元果樹園の土地でした。ご主人が亡くなられ、果樹園は廃業。梨を育てていた土地は、草が伸びるだけの状態になっていました。広さは約2,000坪。市街化調整区域です。「もうどうにもならん」と言われていた土地でした。
確かに簡単な話ではありません。市街化調整区域ですから、自由に宅地分譲はできません。建築には都市計画法上の許可が必要です。道路の取り方にも制限があります。市街化区域のように中央に道路を入れて整然と区画整理する、というやり方はできません。
それでも、一つひとつ条件を確認し、分割の方法を検討しました。関係する不動産会社とも協力しながら、まずは10区画として進めました。
結果として、現在は住宅が建っています。さらに現在も追加区画を進めており、合計で10区画以上の住宅が生まれています。もともと果樹園だった場所に、いまは新しい暮らしがあるのです。
この地域は、市街化調整区域ではありますが、過疎地ではありません。徐々に、許可を得た分だけ人が増えていく。急激な流入ではなく、少しずつ増えていく。その結果、自治会が分かれるほど世帯数が増えました。これは珍しいことだと思います。
もちろん、良いことばかりではありません。排水の問題、道路の問題、農業との調和。市街化を抑制する地域である以上、無制限に住宅を増やせばよいという話ではありません。
だからこそ、私はやみくもに「活用しましょう」とは言いません。
その土地にとって、本当に現実的な選択肢かどうか。周囲との関係はどうか。長期的に無理がないか。そこまで考える必要があります。
それでも、この土地に家が建ち、新しい家族が暮らし始めたことは事実です。地主の方から「ありがとう」と言われたとき、この仕事をしていてよかったと感じました。
「丹頂ガス」の土台があるからこそ向き合える

市街化調整区域の案件は、決して効率の良い仕事ではありません。手続きに時間がかかるうえ、調査にも大きな手間がかかります。取引に至らないことも少なくありません。一般的な不動産会社であれば、まず積極的に取り組む分野ではありません。
それでも私がこの分野に向き合い続けられているのは、丹頂ガスという土台があるからです。
丹頂ガスは、四日市で長年、ガス・水道・電気・リフォームなど暮らしのインフラを支えてきました。「地域を守る会社ナンバーワン」を掲げ、ガスの供給だけでなく、住まいの小さな困りごとにも対応してきた会社です。私はそのグループの一員として不動産を扱っています。
もし私が単独で独立していたなら、市街化調整区域にここまで向き合うことは、まず不可能です。資金繰りを優先せざるを得ず、効率の悪い案件には手を出せなかったでしょう。丹頂ガスの土台があるからこそ、競争に巻き込まれず、差別化された領域に集中できます。そして、無理なことは無理だと正直にお伝えできます。
市街化調整区域は、本来、市街化を抑制するための地域です。農業を中心とした土地利用を前提に設計されています。だから私は、「活用できる可能性があります」と言う一方で、「何でもできます」とは言いません。
実際に、住宅が増えれば排水の負荷が高まることもあります。農業を続けている方にとっては、住宅の増加が歓迎できない場合もあります。地主にとっては救いでも、近隣にとっては負担になることもある。すべての人にとっての正解はありません。
だからこそ、急激な開発を目指しているわけではありません。
過疎でもなく、過密でもない。農業と既存集落と、新しい動きが少しずつ共存している状態。それが現実的な着地点だと考えています。
調整区域は制限された土地です。だからこそ、慎重であるべきです。可能性があるものは丁寧に活かす。難しいものは、難しいと根拠をもって伝える。法の抜け道や強引なやり方はしません。
丹頂ガスが長年築いてきた「顔の見える関係」を損なうような仕事はできません。市街化調整区域に向き合うということは、単なる不動産取引ではなく、地域の未来に関わることだと思っています。そこに意義を感じ、この仕事を続けています。
「この土地はどうにもならない」と諦める前に

「うちの土地はもうどうにもならん」と言われてきた方を、何人も見てきました。
ただ、その“どうにもならない”は、本当に調べたうえでの結論でしょうか。市街化調整区域だから無理。農地だから無理。田舎だから無理。そう言われたまま、確認もされずに止まっているケースは少なくありません。
もちろん、本当に難しい土地のほうが、多いとは思います。第一種農地であれば、農業従事者以外への売却は現実的ではありません。その場合は、その理由をきちんとお伝えします。
しかし、調べてみなければ分からないことも多いのが実情です。条例の変更、既存集落の指定状況、建築の見込み、転用の可能性。タイミングによって、できることとできないことは変わります。放置している間に、かえって条件が厳しくなることもあります。
私は、期待を持たせるために「できます」とは言いません。できる可能性があるなら、その根拠を示します。難しいなら、その理由を明確に伝えます。
持ってきていただきたいのは、特別な書類ではありません。まずは、「どうにかしたい」という気持ちです。そして、分かる範囲で構いませんので、その土地の地番を教えてください。地番が分かれば、登記や法的条件は調べることができます。相談の段階で、すべての資料がそろっている必要はありません。
売却を決めていなくても構いません。「もしかすると」という段階でも構いません。不動産屋に相談するのは敷居が高いと感じるかもしれませんが、私は町名を聞いた瞬間に仕分けをするようなことはしません。
土地に貴賤はありません。
その土地がいま、どんな状態にあり、どうすれば前に進めるのか。一緒に整理していきましょう。「もうどうにもならない」と思う前に、一度、お声かけください。まずは事実確認から、一緒に始めましょう。









